大阪心斎橋で出会う、アツイヤツ

日本一熱いたこ焼きがあると聞いていた。
「どこのたこ焼きを食べても美味しいと思う」ほどたこ焼き好きが営む、
たこ焼き屋「SEIDAKO」
無類のたこ焼き好きとしては、一度は食べてみたいと願いつつ、
その店主がこのたび焼肉屋をオープンしたとのこと。
焼肉とたこ焼きを堪能すべく、一路大阪へ。


ーザ・大阪人
焼肉屋の予約は17:00。
「オープン前にちょっと呑もうや」とのお誘いで、
私たちが新大阪駅に着いてからホテルへ荷物を置くまでの間、「今どこ?」
何度連絡があっただろうか。
「関西人=せっかち」なるほど。
生粋の関西人であろうことを会う前から予想した。

笑顔で出迎えてくれたのは、大阪を体全部で表現したようなひと。松原誠司さん。
心斎橋のアメリカ村をぐんぐん進み、
「俺、先いっとくわー」と引いていた自転車に跨りせっかち再発動。


指定されたお店に入るとまだ準備中の看板。
17:00開店の「やきとり庭」は誠司さんの後輩が営む居酒屋。
「えぇやろ?」
「いや、迷惑です」
ガハハハハハハ。
同じ界隈で商売をする者ならではの、コミュニティ。
東京からやってきた私たちを後輩に紹介し、乾杯をして、大阪の旅は始まった。

ー焼肉GUJI
やきとり庭を後にし今回の目的地、2月1日にオープンした「焼肉GUJI」へ。
酔っ払ったら帰りは転がって帰るしかない、と覚悟を決める急な階段を登り、
まるでせいじさんを表したかのような大迫力の壁画を抜けると、
黒とシルバーを基調としたスタイリッシュな店内へ。

店舗の従業員に私たちを紹介し、また乾杯。
店内を紹介しながら、「これ○○さんにもらったんや。えぇやろ?」
「甘え上手ですね」と言うと、
「せやろ?でもな、その人たちが何かをやると言ったら全力で何でもやるで。
全ては人との繋がりやからな」と誠司さん。
それを証明するかのように、誠司さんに会いにお客さんが続々とやってくる。


私たちと話している間にも別のテーブルに行っては話しをし、そしてまた戻る。
メニューのこだわりや、お店を開けた経緯なんてものを聞けたらと思っていたけれど、
そんな時間もなく「たこ焼き屋に知り合いきたから先に行っとくわー」と
たこ焼き屋へせかせかと向かってしまった。

ーたこ焼きSEIDAKO

お肉を堪能し私たちもいざ、たこ焼き屋SEIDAKOへ。
焼肉屋から歩いてほどなく、SEIDAKOはある。
私たちが着くと、たこ焼き屋の顔になった誠司さんがカウンターの中でたこ焼きを焼きながら、
従業員と私たちとを、紹介し合う。
早速たこ焼きを注文した。
「俺、店が忙しくなると、たこ焼き焼かん!○○(よそのお店)のたこ焼き買ってきてーって言う。
だってみんなと話しとる方が楽しいやん。たこ焼きはどこのたこ焼きもうまいからな」と言い出す。
そう言いながら、慣れた手付きで素早く生地を丸くしていく。
SEIDAKOの特徴であるサラサラの生地が固まるまでじっくり待つ。
せっかちな誠司さんでも、きっとこれだけは待てるのだろう。
その姿はやはり職人である。
驚くほどに柔らかいのに、真ん丸のたこ焼きが出来上がった。
そして、なによりも熱かった。

左:ねぎポン酢 中:ソース 右:塩マヨ

ーとにかく人や
平日だというのに店内は満席。
私の隣に座った常連客は言う。
「大阪は特に人よ。もちろん味も大事やけど、とにかく人や」
俳優、ミュージシャン、企業の社長、家族連れまでお客さんは幅広いという。
年齢も職業も目的も違う人たちが居合わせる。
いつの間にか店内は一体感と化すから、これ不思議。


せいじさんは、背中にも目があるだろう。
そこにいる全てのひとのテンション、表情を確実に受信。
お客さんの動向を一時も見逃さず、スタッフにさりげなく、即指示を出す。
みんなが楽しめる最高の空間を、どんな時も忘れない。
満席の店内にまたまた1組のお客さん。
私たちは店を後にし、別のお店へ。
SEIDAKOにいたお客さんを接客後、「せっかく東京から来てくれたのに悪かったなー」と
笑顔で現れた。
オーナーの傍、バンド【Reservoir Dogs(レザボアドッグス)】を結成している誠司さんは、
疲れた顔ひとつ見せずカッコイイ歌声を聴かせてくれた。
バンドは自分たちで作詞作曲も手掛け、ライブもするほどのプロ顔負け。
ライブで得た収益は募金に回すという。
「人生は、楽しんだもん勝ち」と全てを楽しむ誠司さんが言う。


ようやく落ち着いたので、ゆっくり話しを聞こうと思ったけれど
そうだ、誠司さんはせっかちだった。
いや、お店へ先に向かうのも、途中でSEIDAKOへ向かうのも、せっかちなんかではなく
みんなが気持ちよくいるための、先を見て段取りするという最上のホスピタリティ。
どんなに忙しくても、自分の大切な人同士を紹介し合うことを忘れない。
誠司さんを中心に人が、世界が繋がっていく。
それを楽しみ、大切にするせいじさんを見て、飲食店の真髄を感じたような気がした。

日本一熱いたこ焼き屋「SEIDAKO」が熱かったのは、たこ焼きだけではないはずだ。